雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

刑事弁護人としての履歴 その5

2019.07.30

(ゴーンは特別?保釈の運用状況) 
 最高裁の統計によれば、第1回公判前に被告人が保釈された率は、2000年の48%から2017年の66%に増加している。これだけみると、被告人の身柄に関わる手続は改善されているともいえる。
 しかし、私たちの地方の実務感覚でいうと、そう単純ではない。たしかに自白事件については早期に保釈を認めるようになったが、否認事件の場合はそうはいかない。検察側の立証などが終了しない限り、裁判所はなかなか保釈を認めない。早期に釈放したりすれば、被告人が証人予定者と接触して証言をゆがめたり、有罪となる証拠を破壊するなどの証拠隠滅の虞れがあると考えるからだ。
 だから、ゴーンの保釈は異例といえる。捜査期間中は勾留を認めていたが、起訴後公判前にゴーンの保釈を裁判所が認めたからだ。これが前例となればいいが、そうは簡単にならないだろう。国際的な批判を避けるためにゴーン被告については特別扱いをしただけではないだろうか。まだまだ人質司法がなくなる道ははるか遠い。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事